読書記録


ミステリーを中心とした読書記録※ネタバレ多数あり
by mysterylover
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※個人的な感想・評価(五つ星)です。
※ネタバレにつながる部分が多数あります。

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GOTH リストカット事件

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 不幸にも先に漫画を読んでしまっていたために、要所要所で素直に驚くことができず非常に残念であった。しかし、それはそれとして十分楽しむことはできた。(人間と犬の入れ替わりによる叙述トリックを使った章「犬」はやや無理があるように感じられたが)特に主人公二人の不思議な魅力にだんだん魅せられていくのが心地よかった。その中でも「ぼく」の淡々とした名探偵ぶりが痛快であった。
 最も印象深い章はやはり「リストカット事件」だ。唯一素でいられる相手、森野の痕跡を犯人の家に残すことによって彼女の手を切らせ、それを手に入れたかったという「ぼく」。なんとも不可思議な思考だがこの二人の関係性をよく象徴しているようにも思う。
 双子の姉を事故死させ、姉のふりをして生きてきたという森野の過去が明らかになる「記憶」、土に埋められたのは森野ではなく彼女の生徒手帳を届けにいく途中だった別の女生徒だった、そしてその恋人は自ら土の中に生き埋めになることを選択するという驚愕の展開をみせる「土」の2章は漫画でも強く印象に残っていた。
 最後の章の「声」は「ぼく」が犯人と思いきや犯人は別人で、狙われた少女の相談にのり、彼女を助けた人物こそが「ぼく」だったという叙述トリックが用いられていたがこれもなんとなく気づいてしまい残念だった。
 とはいえこの作品全体に流れる独特の雰囲気はとても魅力的で、読み進めていくうちにだんだんこの世界にのめりこんでいくような感覚であった。
★★★★(4)
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by mysterylover | 2008-11-20 22:55 | 乙一 | Comments(0)

密室殺人ゲーム王手飛車取り

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 インターネット上でお互いの素顔を知らない5人の人間が実際に自分の行った犯行について問題を出し合う、という奇抜な設定に引き込まれた。しかし、一つ一つの問題は特にどうということはなく(ネット上でのやりとりが次の問題の伏線になっていたりするのはうまいとは思うが)、この設定がほぼ全てなのか・・・と油断していたところで見事に騙された。しかも何度もすがすがしいほど見事に。
 まずは登場人物である「頭狂人」が実は女性であったこと。工業高校志望だったこと、取材人になり済まして事件の調査をしていたこと、その口調・ニックネームなどからすっかり男だと思い込んでしまっていたが考えてみればどれも固定観念にすぎず、むしろ筆者も示しているように取材がスムーズに受け入れられたことなどのヒントもあったのだ。そしてその正体がばれるのが「頭狂人」によって偽の取材を受けた「ザンギャ君」によって指摘されるという展開もスリリングで面白い。まさかザンギャ君の出題した問題を解くために話を聞いた男性がザンギャ君その人であったとは。頭狂人は自分の正体が他のメンバーにばれてしまうことを覚悟の上で問題をだしたのだ。密室に思われる家でどうやって殺人を行ったのか。答えは簡単で頭狂人が兄を自宅で殺した、というだけのことだったのだ。頭狂人の素顔を知っていたザンギャ君だけが気づくことのできた真実がそこにはあった。
 しかし、この小説で最も驚かせてもらったのはさらにその後の展開だ。頭狂人の問題から顔を出さなくなった「044APD」。彼こそが頭狂人の兄であり、彼女はそのことに気付かず彼を殺してしまったのだった。頭狂人に引きこもりの兄が家にいることは最初から明示されていたが、まさかそれがゲーム上で最も活躍していた044APDであったとは思いもしなかった。こんなにどんどん殺人を犯していっていつかメンバーを殺してしまうことはないのだろうか?とふと疑問に思ったこともあったが確率の面からしてすぐにその考えを却下してしまっていた。まさか同じ家にゲーム参加者が2人もいたとは・・・
 さらに、ゲーム出題の際に修学旅行帰りであったことを気取られ教師であると思われた「伴道全教授」がいまどきの女子高生だったというのも驚きだった。(ただこれは前述の驚きが大きすぎてあまり大きなインパクトはなかったが)
 頭狂人がほかのメンバーを集め、誰かが席をたつと自分が死ぬという仕掛けを用意し、メンバーがあわてふためくというラストはやや物足りないものを感じた(誰か一人しか生き残れないサバイバルゲームなどを恐れつつも期待していた)が、この話の続きをぜひとも読みたいという衝動を高める結果となったのでそれも計算ずくと考えればさすがといったところか。
 ゲームでさくさくと人を殺していくメンバーたちが誰一人として捕まる気配すらないのは都合がよすぎるのではないか、いくら消えたメンバーについて話があると言われたからといってみんながネットの世界を飛び出し実際に集まるというのはちょっと不自然ではないか、などのつまらないひっかかりは多少あるものの実によくできた物語で非常に楽しく読むことができた。
 ミステリーには「騙された!」という感覚を第一に求めてしまうのだが、その点においても突出したできであったように思う。
 同作者では「葉桜の季節に君を想うということ」、「生存者、一名」、「女王様と私」がかなりのお気に入りであったがその上をいく衝撃的な作品であった。
★★★★★(5)
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by mysterylover | 2008-11-15 21:12 | 歌野晶午 | Comments(0)

幻奇島

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 人里離れた島で次々と起こる殺人事件。島民の独特の思想や文化が小説全体に漂っており幻想的な雰囲気を醸し出している。
 島の秘密を暴こうとする途中で誤って島民を殺してしまった西崎。その後本土から一緒にやってきた清水教授が殺され、その助手の可奈子が消えたことなどから犯人は島民に違いないと考える。自分もこの状況に置かれたならば次は自分の番ではないか、島民たちによって密かに始末されてしまうのではないかと考えてしまうところだろう。
 しかし真相はまったく別のところにあった。兄が島のせいで死んだのだと思い込んだ可奈子によって清水教授は島の秘密を暴くための道具として殺されており、彼女自身は島民によって「ニライカナイ」に旅立たせられたというのである。ここでこの物語の中核をなすのがこの「ニライカナイ信仰」だ。神に許されたものは樹海の奥からつながっている「ニライカナイ」(極楽浄土のようなもの)にいくことが約束されているというのだ。実際は樹海の奥に硫黄か何かのガスが吹きだしていて気を失い、外界に通じる洞穴があって潮の干満に従って外界に運ばれてしまうのだろう、とのことだが島民にとってはそんなことは関係ない。その信仰があるからこそ彼らは滅びゆく運命だと知りつつも気丈に生きていられるのである。西崎が殺してしまった島民も神によって死が許され、ニライカナイへ旅立つ途中だったためそれは殺人とはみなされないといのだ。なんともすごい考え方である。
 一見不気味に見える島民たちは実は本当に素朴でいい人たちばかりであった、というどんでん返しがすがすがしい。また、ニライカナイへ旅立つ時には彼らは1つずつ石を置いていくというのだが、島に滅亡が訪れた時そこには島民の姿は全くなく、100以上の石が積み上げられていたというラストも物悲しくも胸に染みいるものがあり、彼らの信仰の強さ・美しさを思わせるものがあり印象的だった。
★★★★(4)
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by mysterylover | 2008-11-04 10:55 | その他著者 | Comments(0)


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