人気ブログランキング |

読書記録


ミステリーを中心とした読書記録※ネタバレ多数あり
by mysterylover
カテゴリ
以前の記事
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 09月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 06月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 07月
2008年 06月
最新のコメント
6月は著者にとって何かし..
by オマケ at 23:59
>つけめんデリックさん ..
by mysterylover at 16:31
まず、警察が浄水器を検査..
by つけめんデリック at 02:47
メモ帳
※個人的な感想・評価(五つ星)です。
※ネタバレにつながる部分が多数あります。

<   2008年 10月 ( 12 )   > この月の画像一覧

しあわせの書

b0141535_1115656.jpg

 最初はどうにも読みにくい文章に感じられ、物語に入り込んでいくのに手こずった。しかし、断食を利用した殺人のたくらみのエピソードなどはなかなかどうして面白かった。「しあわせの書」をでんぷんで作り、それを水に溶かして栄養補給をする、カロリーのない米を食べさせて実は断食を続けさせ集団殺人を目論むなどの展開は突拍子もないが楽しめた。
 そしてなんといってもこの小説のすばらしいのは作中にも登場する「しあわせの書」のからくりがこの小説そのもので体現されている点、つまり偶数ページ右上に書かれた単語と奇数ページ左二行目下に書かれた単語が同じものであるということだ。どのページもしっかりそのようになっておりかつ文章がきちんと成り立っているのだから多少の読みにくさは目をつぶらなくてはなるまい。この画期的なトリックともいうべき取り組みを小説で実現したのは本当にすごいと思う。マジシャンでもある作者だからこそ為し得た技だろう。
★★★★(4)
by mysterylover | 2008-10-28 11:22 | 泡坂妻夫 | Comments(0)

暗鬼

b0141535_10551698.jpg

 大家族に嫁いだ法子がその家にひそむ謎を解き明かしていこうとする話。いっけん仲がよくよい人たちばかりに見える家族だが夜中に家族会議をしたりあやしい言動があったり・・・疑問をぶつけてものらりくらりとうまくかわされてしまう。本当に誤解だったのかと思いきや怪しいきのこを食べさせられたり家族全員によって罵倒を浴びせられたり・・・とにかく全体的に胸の悪くなるようなぞっとする話であった。家族同士の近親相姦、大麻を利用した金もうけ、家族ぐるみの殺人の隠蔽。最終的にはその闇の中に飲まれていってしまう法子・・・どうにも恐ろしく気持の悪い話で苦手なジャンルであった。
★★(2)
by mysterylover | 2008-10-28 11:02 | その他著者 | Comments(0)

使命と魂のリミット

b0141535_10304423.jpg

 遠隔操作により犯行を企む男、利用される女、回想により明かされる犯行動機、良心の呵責により犯行をためらう犯人・・・いろいろな点が同作者の「天空の蜂」に似ている気がした。
 警察官であった夕紀の父親は西園の手術を受けたが死亡した。現在、西園と母親は愛し合っており、夕紀は父親は二人のたくらみによって殺されたのではないかと考える。しかも西園の息子は父親の追跡中にバイク事故で亡くなっていたのだ。これだけの条件が揃えばさも西園が手術を利用して父親を葬ったかに思える。しかし、事実は異なり西園は手術に全力を注いでいた。そのことを彼の手術を通して夕紀は確信する。母親と西園が好きあったのも父親が亡くなってからずっと時間が過ぎた後のことだという。ハッピーエンドといえばそうだし、西園と母親の犯行だったというラストは嫌だとも思ったがこのラストもあまり釈然としなかった。やはりなんだかきれいにまとまりすぎている感じがするのだ。夕紀の患者の家族が夕紀のがんばりを見て嫌がっていた老人の世話を引き受けることにする、犯人が利用した女性のよびかけにより犯行を諦める、などすべてがうまくいきすぎでどこか白々しさを覚えてしまう。どこか一つくらい悪意めいたものがあってもよかったのではないだろうか?なにかはっとする結末、リアリティに欠けていたように思う。突然西園が倒れ、夕紀が母親に向って「あたしが救うから。二人目の父親は絶対に死なせないから。」などと言うラストは寒さで鳥肌がたちそうでさえあった。お涙ちょうだいものとでもいうのであろうか。とにかく白々しさばかりが残る。
 ついでに言わせてもらえばタイトルもいまいちピンとこない。夕紀がたまたま犯人を目撃し、たまたま親しくなった警官がたまたま落とした写真の中に犯人がいたのを思い出す、というご都合主義によってやっと警察が犯人を追い詰めるというのもどうかと思う。
 さくさくと読みやすい話でその点はよかったとも思うが・・・
★★(2.5)
by mysterylover | 2008-10-28 10:51 | 東野圭吾 | Comments(0)

流星の絆

b0141535_10282167.jpg
 
 子供の頃に両親を殺された3人の子供たちの成長後のストーリー。詐欺によって金を得ていた3人はひょんなことから親殺しの犯人と思われる人物にでくわし復讐を誓う。しかしその犯人は末子、静奈が好きになってしまった男の父親だった、という展開。子供時代の事件から現在に時が流れてゆく点、刑事がその子供たちを気にかけ追いかけている点、「絆」によって登場人物たちがつながれている点などは「白夜行」を想起させるものがあった。
 「白夜行」との主な相違点は犯人の意外性と物語の終わり方だろう。まず犯人について。この物語は「白夜行」と違いそれぞれの登場人物の心情がダイレクトに描かれている。そのためにその心情を描かれていない戸神政行=犯人と思いこんでしまうし、状況的にも彼の反応的にもそれは疑いようのない真実に思われる。しかしまさかのどんでん返しが用意されている。政行は両親が殺された後レシピを受け取りに店に行き、その惨状を目撃したもののレシピをもってあわてて逃げた、というだけだったのだ。ここでうまいと思うのは政行が父親にしか作りえなかったはずの「ハヤシライス」の味を再現しており、そのことから3人の彼への疑念がつのってゆくという展開になっていることだ。まさか父親が金と引き替えにレシピを売るなどとは夢にも思わなかった3人からしたらそのレシピをもっている男=犯人と思うのは無理からぬことだ。読者も同様である。そしてさらに意外なのは真犯人は3人のことを案じ、事件のことを必死に追いかけていたかに見えた柏原刑事だったことだ。あまりにも唐突な展開に虚を突かれた思いだったが犯人が置き忘れた傘を重視しなかったり、後輩刑事の心情は語られているものの柏原自身の心情はその刑事の目を通してしか語られていなかったり、と伏線はあった。動機も死んだという息子の手術代を得るためだったという筋の通るものであり納得のできないものではない。(騙された!というすがすがしさはあまり感じられなかったが)
 ただそれだけに個人的に残念なのはラストの展開だ。突然次男が改心し、長男と共に自首することにする点といい、静奈に騙されていたことを知った上でなお行成が静奈への思いを貫く点などやや綺麗にまとまりすぎてしまっている印象を受ける。もちろんラストに救いがあるという展開が悪いなどというつもりはないが、いくらなんでも展開が急すぎてついていけない気がした。そういった意味で「白夜行」の余韻を残す切ないラストのほうがずっと胸をうったし印象に残っている。
 もう一点、気になるのは帯の「最大の誤算は、妹の恋心だった」という言葉だ。読み終えて思ったのは静奈の恋心など最大のどころか別に誤算でもないのでは?ということだった。静奈が恋心のために作戦の実行を阻止した、とかならばともかくそうではないし、行成に作戦がばれてしまったことは意外ではあったがそれも恋心のための失敗とは言い難い。そもそも行成にばれたものの彼は結果的に作戦に協力したのだ。妹が恋心のために兄弟を裏切り、そのことに気づいた兄弟は静奈のために自分たちの命を捨てることで事件をうむやむにし、妹の幸せを守ろうとする―(ちょっと期待していた)このような展開だったならば帯の言葉も生きてくるとは思うのだが・・・
★★★(3.5)
by mysterylover | 2008-10-21 10:25 | 東野圭吾 | Comments(0)

完全犯罪証明書

b0141535_839729.jpg

・「裏窓のアリス」加納朋子★★★(3.5)
 おなじみ仁木探偵と安梨沙助手のコンビが事件を解決するストーリー。自分が浮気していないことを旦那に証明してくれと依頼してきた女性。浮気を隠すための手段かと思われたがその本当の目的は旦那の会社の機密事項を漏らしていたスパイが自分でないことを旦那に証明するためだった、というおち。スパイに情報を送る手段が庭の空き缶の置き方、というところがなかなかおもしろい。

・「バッド テイスト トレイン」北森鴻★★★(3)
 池波正太郎の「食卓の情景」が作中に盛り込まれ、割と興味深く読めた。ただ話全体が雑然としている印象でなにを目的として描かれた作品なのか、この一短編だけでは説明不足な気がした。悪臭をふりまく人物がいるのに車両を移らなかった人間、駅弁にこだわりをもっていなかった人間は追われる者と追う者の立場だったから―主人公がそれに気付かなかったのは嗅覚を失っていたから、というおちは悪くはないが主人公自身にまつわる謎(なぜ嗅覚を失ったのか、最後の「殺人者で、逃亡者です」のセリフはなにを意味するのか)が残ったままでどうにも消化不良な印象。とはいえこれはこの一短編のみをきりとってこの本に収録されたことにこそ原因があるように思う。

・「切りとられた笑顔」柴田よしき★★★(3.5)
 普通の主婦がネットの世界にのめりこみ、身を破滅させる話。不倫恋愛の悩み相談の末に送られた画像には自分の夫が写っていた。そのことがどうしても許せなく離婚に至るが夫は彼女をネットの世界に誘ってくれた親友と再婚するという。意気消沈しているさなかたまたまネットでみつけたHPで以前悩み相談をしてきた女性の経歴はまったくのうそだったことが判明する。不倫相手だった彼女が妻であった自分に対していやがらせをしたに違いないと判断した主人公はついカッとなりその女性を殺してしまう。しかし真相は親友がちょっとした意地悪のつもりで新婚旅行の写真からこっそり夫の写真を切り取り、割と有名な女性作家の写真を合成して送り付けたのだった。主人公は自分のことしか見えておらず、常に飾ってあったはずの新婚旅行の写真でさえ旦那のことは眼中に入っていなかったのだ。この親友にもっと悪意や計画性があっての犯行という展開を期待したのでその部分はちょっと物足りなかったが、全体的に興味深く読めた。

・「ドア⇔ドア」歌野晶午★★★(3.5)
 ついカッとなって同じアパートに住む先輩を刺殺してしまった男が犯行を隠そうと四苦八苦する話。ドアに返り血が飛んでおり、ひびもはいってしまったことに気づいた男は自分の部屋のドアと被害者の部屋のドアを交換することにする。一見うまくいったかに思えたが「長い家の殺人」でおなじみの信濃譲二によって犯人は追い詰められていく。決定打となったのは被害者がつっかえ棒として使っていた木刀によるへこみがドアに見られたこと、そしてゴミ収集のお知らせの紙の年度。犯人の心理がうまく描かれておりはらはらしながらも楽しく読み終えることができた。

・「朝霧」北村薫★(1)
 祖父の日記に記された文字の謎を解くと、それは秘められた恋心を歌にしたものだった、という話。全体的に知識がないと難解な部分が多く正直読むのだけで疲れてしまった。

・「過去が届く午後」唯川恵★★★(3.5)
 昔はたいした期待もされていなかったが今は事務所で重要な立場に立っている有子と期待の星だったのにもかかわらずあっさりと仕事をやめ専業主婦をしている真粧美。同窓会で再会した後から有子のもとに真粧美から次々と「借りっぱなしにしてしまっていたもの」が届く。日に日にその異常さは増してゆきついには半分こしたというサンドイッチやジュースまでが届くように。異常を感じた有子が彼女に連絡すると二人はいるべき場所を間違えてしまったのだという。そして最終的には二人がかつて同時に好きだった真粧美の夫までもが「これは本来、有子のものです。」と送られてくるのである。なんともゾッとする話だ。借りたものは全部返すから自分の居場所、あるべき栄光を返してほしい、狂気の沙汰で彼女はそう考えていたのだろう。

・「生還者」大倉崇裕★★★(3)
 登山の専門的知識が多数見られややとっつきにくい印象。登山というもののロマン、危険さ、死に直面した時の人の心理などがメインになっていて、謎解きやどんでん返しを期待して読むものではないと感じた。

・「七通の手紙」浅黄斑★★★★(4)
 消息を絶った息子のことを心配する老婆と元恋人との手紙のやりとり(かに見える)。元恋人が婚約者と息子のあとを車でつけていたことなどが仄めかされ、さも彼女が彼をどうにかしてしまったのか?と疑わせる展開になっているが事実はまったく別のものであった。手紙を書いていたのは老婆ではなくその義子であり、目的は彼女をさりげなく脅すことによって男の荷物の中にある老婆の印鑑を手に入れることが目的だったのだ。看護婦さんに代わりに書いてもらったという手紙があまりに推敲されたものであること、届くのが早すぎること、送れという荷物の指示が具体的すぎること等からこの真実を突き止めた彼女の推理も爽快であるが、全てを手紙のやり取りで終始させる文章の構成も秀逸で短編であることが最大限いかされた作品の一つだと感じた。

・「雷雨の夜」逢坂剛★★★(3.5)
 雷雨の夜にとあるバーで行きあった男女。そこへ一人のやくざが銃をもって飛び込んできた。同日、近くのコンビニでは従業員が一人刺殺されたという。その店長の名前を書いたメモをもっていた主人公、彼の財布と多額の現金をもっていた男、その事件をきいて取り乱す女など事件は思わぬ方向に。主人公がなにか具体的に事件に絡んでいるのかと思ったが、実際はその場にいたメンバーではない元恋人に店長は刺殺され、財布を盗まれたのは偶然であり、主人公は店長に捨てられた妹の仇をうとうとしていただけだったとい結末はやや拍子抜けした。が、銃を振り回していたやくざの正体が雷恐怖症であり、雷の音をかき消すために発砲していたといのはなかなか面白かった。
by mysterylover | 2008-10-15 09:09 | その他著者 | Comments(0)

虹の家のアリス

b0141535_238711.jpg

 「不思議の国のアリス」になにかしら絡みをもたせた短編集。ちょっと頼りない探偵としっかりものの助手のコンビがなかなか面白い。
 日常生活で起こるちょっとした事件(命を狙われていると思ったら母親を心配した子供が仕組んだことだった、赤ん坊が密室から誘拐されたと思ったら夫婦の狂言だった等)が多く、どこかほのぼのと読めてしまう。助手である安梨沙の心情にスポットがあてられている話もありさすがにそれはミステリーとしては物足りなかった。
 アルファベット順に猫が殺されているとネットの掲示板に書き込みが続き11匹の猫を飼う女性が震え上がるが実際は事件そのものが女性の知人によるでっちあげだったというどんでん返しの「猫の家のアリス」が1番気にいった。
 息子にガールフレンドをストーカーから守ってほしいと言われ探偵がガールフレンドとストーカーを誤って扱ってしまう、しかし実際はそれであっていたという展開が二転する「鏡の家のアリス」もなかなかよかったがミスリードがあからさますぎて「これで終わりなわけはないよな」という印象を強烈に受けていたため特に驚きはなかった。
★★★(3.5)
by mysterylover | 2008-10-14 23:32 | その他著者 | Comments(0)

戻り川心中

b0141535_22544263.jpg

五つの短編中「戻り川心中」のみ読了。
 
 歌の世界の話や歌そのものの登場が非常に多く、作中世界に入っていくのにやや苦労した。しかし最後のどんでん返しは非常に見事に、また綺麗にきまっておりすばらしい。
 主人公が二人の女性と自害を図った。その裏に隠されたのは真に愛する女性、すでに出家してしまった女性を自分のもとにかえってこさせるための芝居であった。二人の女性を道連れに死ぬことを仄めかすことで彼女のかたくなに閉じられた心が開くと信じた哀れな歌人の心であった。・・・と納得のいく結末に一度はたどりつくのだがさらなるどんでん返しがあった。主人公が真に追い求めたのはどの女性でもなく、「自分の歌にリアリティをもたせること」、「自分の歌通りに事件を起こすこと」だったのだ。この驚くべき動機、結末には心底驚いた。まさかこのような動機がこの世に存在したとは・・・歌の世界の厳しさを感じると同時に主人公の、そして女たちの憐れな心情を感じずにはいられなかった。
★★★★(4)
by mysterylover | 2008-10-14 23:07 | 連城三紀彦 | Comments(0)

殺戮にいたる病

b0141535_21462883.jpg

叙述トリックが用いられた作品の代表作の一つ。息子を犯人でないかと疑う雅子の視点、犯人である「蒲生稔」の視点、犯人を追う樋口の視点の3つの視点で文章が構成されている。雅子の視点によってあたかも犯人は雅子の息子なのだと思い込まされてしまう。しかしこれこそが作者によって仕掛けられた巧妙なトリックであり、雅子の息子=稔ではなく、雅子の夫こそが稔なのである。
 この仕掛けは実に巧妙でいくつものミスリードが用意されている。雅子の息子に犯人かと思われるようなあやしい動きをさせることもその最たるもの。実際は父親が犯人であることに気づいた息子がこっそりと犯行について探っていたのだが・・・さらに稔の語りで「母親」というキーワードを盛り込むことによって母親=雅子と読者をミスリードするが実際は雅子の義母の容子なる人物のことであった。大学、講義、休講などのキーワードも多々でてくるためさも犯人は大学生であるかのように思われるが実際は大学教授だったというのも筋が通っている。被害者の女性の中には犯人のことを「~の権威」「オジン」などとよんでいる者もおり、ヒントがしっかりと明示されているのも見事。
 グロテスクな表現が多く読んでいてやや気分の悪くなる部分もあったが、見事などんでん返しで騙された!という爽快感が残った。
★★★★(4.5)
by mysterylover | 2008-10-07 10:59 | 我孫子武丸 | Comments(0)

神様ゲーム

b0141535_1845867.jpg

 児童向けの作品となっているようだが、とてもそうは思えない壮絶ものの内容。というかこれは児童に読ませてはいけないような・・・
 「鈴木君」という「神様」が事件の真相を断片的に主人公に伝えるという手法(主人公のいう「神様ゲーム」)が、本来読者が知りえない「絶対的真実」を明示するのに非常に有効な手段となっている。「神様」のいうことに嘘はなく、ただし知っていることすべてを教えてくれるわけではない。与えられたピースから主人公と同じように読者は真実を探るしかないのだ。
 主人公の親友である英樹の死体が発見され、警察である主人公の父親によって現場検証が行われるが犯人が隠れた形跡は見当たらない。事故死としてかたづけられてしまいそうになった事件だが、鈴木君によって主人公の疑い通りこれは殺人であることが告げられる。主人公の捜査により井戸の蓋を利用して犯人が隠れていた可能性が浮かび上がる。ただしそれができるのは小学生の主人公と同じくらい小柄な人間だけ。
 主人公の願いを聞き入れ鈴木君(神様)は犯人に天誅を下した。そしてその犯人とは主人公が恋心をいただいていたミチルちゃんだった。これは現場検証にミチルちゃんだけが主人公につきあったことなどからなんとなく予想していた展開ではあった。しかしもちろんそれだけで終わるわけはない。ミチルちゃんには共犯者がいてその共犯者と「エッチなこと」をしている現場を目撃されたため英樹は殺されたのだという。確かに共犯者がいなければ為し得ない犯行であった。そこで主人公は推理する。共犯者は警察である主人公の父親である、と。もしそうであるならば現場に犯人がいた痕跡がないのも当然のことだし、ミチルちゃんが英樹の死体を発見したときにほかの警察より主人公の父親を呼ぼうとしたこともうなずけるし、犯人が裏庭に潜んでいる可能性が大きかったのにもかかわらず、父親が無理に主人公を裏庭にむかわせようとしたのは自分が脱出するルートを確保するためと考えられるからだ。この衝撃の展開もさることながら、小学生でありながらここまで論理だてて推理できる主人公に驚かされる。なんという残酷などんでん返しであることか・・・と思ったも束の間。さらに大どんでん返しが待っているのである。
 主人公は鈴木君(神様)に共犯者にも天誅を与えてくれるよう頼む。その結果死んだのは主人公の父親ではなく母親だったのだ!正直この展開にはわけがわからなかった。「ただひとつだけはっきりしていることがある。それはこれが神様の天誅の結果であり、神様は間違えないということ。たとえどんなに信じられなくても、そこにはただ真実のみがあるはずだ。」とこの結末=主人公の母親が共犯者であったことは揺るぎない真実であるのだということが明示され物語はぷっつりと終わってしまう。残るはたくさんの?である。母親が犯人であるならば、ミチルちゃんと父親のとった行動の不可思議性はいったいなにによるものなのか?母親が犯人であることに気づき(共犯ではないが)事件をもみ消そうとしたのか?(これが一番納得のいく気がするがやはりやや釈然としないものがある。)ミチルちゃんと母親が女どおしで「エッチなこと」をしていたというのか?(というかそんな内容を児童向けの本に盛り込んでよいのか・・・)父親が犯人であるという主人公の推理はとても筋の通ったものであり、どんでん返しとしても素晴らしい内容であったのにもかかわらず特に伏線のない母親を強引に真犯人にした作者の意図はなんなのか?とにかく謎ばかりである。
 辛辣な内容はさておき、児童向けだけあって同作者の作品の中では抜群に読みやすく息をつかせぬ展開であっというまに読めてしまった。それだけにラストの展開はもう少しでいいから説明がほしかった。
★★★★(4)
by mysterylover | 2008-10-06 18:52 | 麻耶雄嵩 | Comments(0)

容疑者Xの献身

b0141535_10121229.jpg

 「探偵ガリレオ」、「予知夢」に登場する草薙・湯川コンビが登場する長編小説。湯川の親友である石神は愛する女性のために、彼女とその娘の殺人隠蔽に協力する。彼に疑いをもった湯川・草薙が彼の仕組んだ(提示した)「答え」に挑戦していくというストーリー。
 この小説には2つほど大きな「仕掛け」が施されており、その両方に気持のよいほど最後まで気付かなかった。まず1つは石神が殺人を隠蔽するためにまったく別の人物を、ただその目的のためだけに殺したということである。死体の処理を引き受けその隠蔽に力を貸したことは最初から明示されていたが、その方法については最後まで解き明かされないのでまさかそんなことが行われていたとはまったく予想だにしなかった。そのトリックにこそ石神の真の気持ちが隠されている。そしてその「気持ち」こそが第2の仕掛けである。いくら愛する女性のためとはいえ、その罪を隠すために自らの手によって全く関係のない第三者(今回はホームレスであった)を手に掛けることなど倫理的観点からも感情的な面からもそうそうできることではない。それほどまでに石神は彼女を崇拝し、愛していた。
 だからこそ彼は彼女を支えることのできそうな男性が現れると2人の写真を撮ったり、その男に脅迫まがいの手紙を送ったりとストーカーのような行為をとった。常に冷静沈着に行動する石神にまさかそんな一面があったとは・・・と驚きながら読み進めていたがそれこそが彼のほどこしたトリックだったのだ。彼は自分をストーカーに仕立て上げることによって愛する女性のために最後の防壁を作った。彼女は事件にはなんら関係なく、ストーカーである自分が勝手に勘違いし勝手に殺人を犯したのだという防壁を。これには相当な衝撃を受けた。同作者の「悪意」ではこれほどまでに人は人を憎むことができるのか、ということがテーマになっていたがこちらは逆にこれほどまでに人は人を愛し慈しむことができるのか、ということを嫌というほどに感じさせられた。
 娘の自殺未遂によって結局彼女も自首し、石神が声をあげて泣くというラストはやや急ぎすぎて唐突にも感じられたがほかにふさわしいラストがあったかといえば難しいだろう。
 今まで常に冷静に見えた湯川が親友の絡んだ今回の事件の中では人間的な面をたくさん見せているのも印象的だった。草薙に向って「友達であると同時に刑事だ」、「この話に基づいて君が捜査を行うというのなら、今後、友人関係は解消させてもらう」といった湯川の心中を考えるとまたなんともせつないものがある。
★★★★(4)
 
by mysterylover | 2008-10-03 10:42 | 東野圭吾 | Comments(0)


検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧