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※個人的な感想・評価(五つ星)です。
※ネタバレにつながる部分が多数あります。 |
「家」にかかわる五つの事件を描いた短編集。 ・人形師の家で 継母の影響で女嫌いになった男は自ら石膏像をつくり理想の女性を得ようとする。そんなある日、ついに彼の思いが通じたのか石膏像が人間としてのぬくもりをもった。彼は彼女を抱きしめたが、目覚めると石膏像は砕けていた。夢だと思っていた地震が現実で、現実だと思っていた彼女のぬくもりこそ熱病の中での夢だったのだと悟った彼はその場に泣き崩れる― 神話をモチーフとした始まりで最初は少しとまどったが、この伏線が物語に見事にいかされている。 主人公の母は父を刺し殺した。遺書で明かされた本当の理由。母は昔上述の男の家に家政婦として働きに行ったことがあった。そしてつい好奇心から地下室を覗き、石膏像を壊してしまった。そこへ男がやってきたので母は石膏像に成りすまそうと自分の着衣を脱ぎ捨て、石膏像が着ていたナイトウェアを身にまとった。男は母を抱きしめ、唇を奪った。それで母は体で償えということなのだと理解し観念した。その時の子が主人公であり、それが父にばれ暴力をふるわれたから思わず刺殺してしまっていた、といのである。 母と男の間に完全なる思い違いがあったために生まれてしまった悲劇。やるせなさは残るが、神話的な話をきちんとリアリズムをもって解決しており好印象。 ★★★★(4) ・家守 暖房器具の排気口の先端に電気掃除機のホースを接続し、室内の空気を吸い出すことによって窒息死させる、というトリックはコナンとかでありそうだな、くらいの印象だったがそれよりも秀逸なのは、最初に笙子が首を絞められて殺されたかのようなミスリードが非常にうまくいかされている点である。 殺された笙子は行方不明になった妹がいつ帰ってくるかわからないから自分はずっと待っていなければならない、という理由で家の立ち退きを頑なに拒んでいた。しかし、実はその妹は子供のころ笙子が絞殺し、母に従って家の庭に埋めたのだった。だからこそ笙子は家を離れられなかったのだ。ミスリードのシーンは笙子が殺される場面ではなく笙子が妹を殺した場面だったのである。この構成がなんともうまく素晴らしかった。 ★★★★(4) ・埴生の宿 呆けてしまった老人の息子役を演じるというバイトを引き受けた主人公は、老人の「逃げなさい」という切羽詰まった言葉と玄関で自分の靴を含む履物という履物がまったくないのを目の当たりにしたことから思わず約束を破って家の外に出てしまう。その後窒息死した主人公がトラックの荷台から発見された。 さも何らかの悪意によって殺されたかに見える主人公だが真実は違う。彼が目隠しをして連れて行かれたバイトの家はビルの屋上であり、濃い霧の中塀を乗り越えてしまった結果、パーカのフードが衛生放送のアンテナに引っかかり窒息死してしまった、というのだ。 元芸能人だった父の名誉と娘のタレント生命のために主人公にそこがビルの屋上であることを隠したがために起こった事件。事件そのものよりもこの家に絡む人々の心情のほうにスポットがあてられているように感じられた。 ★★★(3.5) ・鄙 人里離れた山で一人の男が密室で首を吊って死んでいるのが発見された。酔った彼が村人によって運ばれた後のことだった。酔った男を運び最後に二人きりになった芳夫が犯人であり、被害者を発見した際に鍵をこっそり部屋に戻したというあっさりした解決で事件は幕を閉じたかに見えた。しかし―実の犯人は酔った被害者が自宅に運ばれた際主人公たちと一緒に酒を飲んでいた医者だった。 からくりはこうだ。その時すでに被害者は殺されており、村ぐるみで隠蔽が行われた。さもその時に被害者が生きているかのように見せかけたのだ。そして芳夫は犯人のダミーとしての役を全うした。 普通ではありえないような話だが人里離れた村だからこそ、個よりも集団を尊重し、皆の利益を第一優先に考える。その結果、この村を医者がいないかつての状況に戻すわけにはいかない、として芳夫を犯人にすることにしたのだ。それではあまりに芳夫がかわいそうな気がするが、この村で生きていくからには警察から戻ってさえくれば彼は村のために体をはった英雄として迎えられなにもつらいことはないという。独特の世界に生きる彼らだからこそできたトリックなのだろう。 探偵役である主人公の兄が結局真実を警察に知らせなかったのもわかるように思う。 ★★★(3.5) ・転居先不明 誰かの目線を感じると訴える佳代。夫がだした答えは昔今自分たちが住んでいる家で4人の人間が殺されたというものだった。 連続殺人犯によって3人の家族が殺され、息子だけは正当防衛で犯人を殺し助かった―の図式に見えたその事件。真実は息子が衝動的に家族を殺し、そこにやってきた連続殺人犯をも殺し彼に罪をなすりつけようとしたものだった。この事件だけでも二つのどんでん返しがあり(一つは真犯人が息子であること、もう一つは動機が家庭内暴力をふるう父から母を守るため、ではなく自らが家庭内暴力をふるっており「アドレナリンが出た」というだけの理由だったということ)驚くが、さらにこの物語は技巧が凝らされている。 この事件のことを夫から聞いた佳代はいろいろ不可思議な現象にあい、震え上がる。しかしそれは佳代が実家に帰ってくれればいいのにと考える夫による工作であり、事件がその家でおきたというのも嘘だった。エイプリルフールだしうまくいかなくても冗談ですませてしまえばいい、それくらいの軽い気持ちだった。そして妻はその事実に気づく。風呂場で細工を終えた夫は石鹸で足をすべらせて死んだ。あなたなんか滑って転んで尻餅でもつけばいいのよ―佳代はそう思っただけだったのに。プロバビリティー(確率)による犯罪を目論んだ夫が逆にそれによって死んでしまったというところにこの事件の面白さがある。 ★★★★(4)
by mysterylover
| 2008-06-26 11:03
| 歌野晶午
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