正直に言おう。私はこれを「ホワイダニット」の優れた作品だと知ったうえで読んだ。だから臓器提供の話がいささか唐突に出たところで、ははーん、これは犯人が被害者の臓器提供を狙っての犯行だなと思った。が、真実はその真逆。売春を繰り返していた被害者の臓器を誰かに提供されてしまうことがないようにするための犯行だったのだ。だから犯人の目的は死体の発見を遅らせる(臓器提供が不可能になるまで)こと=扉は閉ざされたままにすることそのものだったのだ。その真相も興味深かったが、その真実を暴いた優佳が主人公(犯人)を諭すでもなく、自分を受け入れてくれれば共犯者になると主人公のミスをそっと指摘し、証拠を隠滅させる展開が衝撃的だった。とかく勧善懲悪になりがちな退屈な展開よりもずっとこちらのほうが面白い!
★★★★(4)