読書記録


ミステリーを中心とした読書記録※ネタバレ多数あり
by mysterylover
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※個人的な感想・評価(五つ星)です。
※ネタバレにつながる部分が多数あります。

モラトリアム・シアター

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 この作品の見どころは、主人公が弟(ミツヒロ)は生きていると思い込んでいるが実は既に死んでおり、主人公自身が一人二役でミツヒロに成りきっているときもあるという点だ。周りの人間はそんな主人公に話をあわせているがところどころに伏線がはられている。
 まず51頁。主人公の妹のミツエがごきょうだいは?と訊かれると「弟がひとり」と答えたという描写がある。「お兄さんは」と問われると「あ、いましたね、そういえば、そういうのも」と返事をしている。ユリエの大学の友人知人だちは、彼女のきょうだいは弟ひとりだけだと思い込んでいるという描写も。
 次に77頁。「ミツヒロがいま付き合ってる彼女というのがこの学校の生徒だとか言ってたな。もしかして、きみの知ってる娘?」と遅野井愛友に主人公が問いかける場面。彼女としては主人公自身と付き合っている(ミツヒロとして)と認識しているので、「予想外の質問だったらしく、一瞬、眼を瞠るあいだ、黙り込んだ。」となるわけだ。
 さらに159頁。同僚に「ほんとうに自分の身内の誰かが死んでしまった、という不思議な体験をしたんだ。そうだろ?」と問われ、主人公は否定することができない。
 これだけ伏線をはられていれば気づけそうな気もするが全体がコメディタッチで描かれていることもあり、また、主人公の記憶が常にあいまいなため真相がわかりにくくなっている。
 一方、主人公をはめた遅野井愛友のやり口は118頁の「本物のテレビ局のクルーをはじめ、三百人以上のエキストラを雇って」というセリフからバレバレだった。彼女が真犯人なのではとまで疑ったがそれはさすがに違った。(というかこの小説において真犯人がだれかということはかなり重要度が低い。)
 同作者のシリーズものの登場人物たちがやたら主張してくることもあり、一読したときは微妙な印象だったが、読み返してみてミツヒロの伏線がしっかりはられていたのでその点で評価を少し上げることにした。
★★★(3)
by mysterylover | 2017-02-21 15:19 | 西澤保彦 | Comments(0)
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