陽菜の悪女っぷりがいっそすがすがしく読んでいて痛快であった。「ストーカー」=栗山いずみというのはかなり早い段階でピンときてしまい特にどんでん返しもなくそのままだったので物足りなく感じた。彼女が同性愛者(というよりは性同一性障害のようだが)だというのはなんとなく分かるし、となれば「俺」という一人称も別に不自然ではないし「よりにもよってくそオカマだと!?半端ものだと!?」の独白からピンとくるのは容易なはずだ。とはいえ最後にはしっかり別のどんでん返しが用意されている。雅水こそが真犯人で景太への歪んだ執着心がその犯行動機だったのだ。秋子の骨が景太のものと間違われ、身元不明の死体が秋子の自殺体と勘違いされた、というのはご都合主義すぎる気もするがぞっとするラストはタイトルの意味とあいまって印象に残るものであった。そういえば倉田医師が実は戸籍状男性であった(優は島ではゆうと呼ばれているが郷里ではマサルと呼ばれている)という設定は何か特別な意味があったのだろうか。叙述トリックというには弱すぎるし高坂のような男性という恋人がいてある意味幸せな人間として栗山いずみとの対比として描かれたのか?
★★★★(4)