「問題篇」の進行と並行しながら、十五通りの「解決」が順次示されていく構成が画期的で面白い。性別誤認トリックや隠された人物が犯人など、なるほどと思わされる解決も多かった。私が思いついたのはたまがネコと見せかけて人間、というだけだったが「ミステリ読みのプロ」はこうもいろいろな伏線を読み取って真相を考えるのかと圧倒される思いだった。「横なぐりの雨に激しく打たれている並木が、まるで身を捩るかのように左右に揺れている」という文章から「並木」という人物がいたという解決法もかなりインパクトがある。最後の解決は平三郎(たいらさぶろう)と平三郎(へいざぶろう)が別人で犯人というバカミスとも呼べるものだが、きちんと伏線ははられており納得せざるをえない。そしてやはりこの小説で面白いと思ったのは、正解者を出さないために、解答者の解答に応じて「問題篇」を次々と分岐させていくというその仕組み。そう考えると正解者さえでなければどの解決もあり得たわけで、この小説の舞台ならではの展開が生きていて素晴らしいと思った。
★★★★(4)