覗く男と覗かれる女、それぞれの日記形式で話が進められてゆくのだがここに仕掛けあり。同時に起こっているように思われる日記は実は年がずれており、女のほうは死んだ娘の敵をうつために母親が娘の行動をそっくり真似していたという衝撃の展開。それにしても子供を溺愛するあまりためらうことなく殺人にまで手をそめる母親、というのがこの作者の作品には多すぎる気がする。ミスリードのためとはいえ大沢芳男が殺人をしていたと見せかけて実は本人の思い込みで精神を病んでいた、というのもどこかで聞いたような話でややご都合主義な印象。窃盗犯、曽根新吉の行動が実は女の隣に住む男によるもので彼が盗んだ2人の日記をもとに小説にして持ち込む、というとってつけたようなこれ必要だった?と思わせるどんでん返しも倒錯シリーズならではなのかこの作者の特性なのか。とはいえ全体的に面白く一気に読むことができた。
★★★★(4)